「日」と「月」と「夕」 (02−11−01)
「日」も「月」も象形文字です。「日」は○の中に点を打ち、輝く太陽を表しました。日(太陽)も月も見た目の形は似ていますが、いつでも丸い太陽に対して、月には満ち欠けがあります。その特長をとらえて「月」は三日月の形を写したものです。「日」のジツという音は満ち欠けのない充実した状態「実(ジツ)」に通じるものといわれます。また「月」のゲツは「欠(ケツ)」から変わったものといわれます。
ここで「夕」の字も一緒に並べましたのは、夕の字も三日月からの象形文字だからです。夕方太陽が西に傾き、空の明るさが落ちてくると、南西の空に現れるのが三日月です。この夕暮れの月の形から夕の字が出来ました。初期の「夕」と「月」とはほとんど同じ形をしています。これらを区別する意味で、月には太陽と同じく、輝きを表す点(横棒)を加えて、今日の形になりました。
「夕」は月の象形文字ですが、「朝」という字にも「月」が入っています。「朝」の左側の「日」の上下の「十」は草などが「生える」「出る」という形で、日が地平から出て昇っていく様子を表しています。右側は元は「川」のよう形で水流や寄せる潮を表したものでしたが、これが「舟」に転じ、その後さらに「月」に変形したというのが通説のようです。しかし一説に、「朝」は草原に昇る日と、明けていく空にある残月を合わせて朝を現した、というものがあります。こちらの方がロマンチックですが、でもこの場合、細かくいいますと、月のカーブが逆にならないといけません。
明け方の月は三日月ではなく、26日前後の月で、三日月とは逆に、左がふくらんだ、左カーブの月なのです。夕方の月が三日月で、明け方の月はこれとは左右対称の26日の月だなんて、知ってましたか。26日の月は早朝の3時頃、太陽に先駆けて昇り、やがて日が昇って空が明るくなると、この明るさに負けて消えていきます。三日月は逆に、太陽が昇って明るくなった後に昇りますので、日中はほとんど見えません。そして夕暮れに、陽が弱まると姿を現し、しばらく南西の空にかがやいて、9時頃には沈んでしまいます。ちなみに満月(15日の月)は日が西に沈む頃、東の地平から昇り、一晩中輝き続けて、日が昇る頃に西空から消えていきます。
左上の図は北極側から太陽を右に見た時の地球と月の位置関係です。月は新月から新月まで約1ヵ月かけて左回りで地球の周りを廻ります。図のように新月からの日数で地球との位置関係が決まります。地球も左回りで1日に1回転します。図から三日月は昼から夜に向かう時に西側の空に、26日の月は夜から昼に向かうときに東側の空に見えることが判ります。
「日」と「月」は、太陽や月それ自体を意味すると同時に、時間の単位としても用いられてきました。日の出から次の日の出までを1日、新月から次の新月までの月の満ち欠けの周期をひと月という具合に、判りやすい単位です。月の満ち欠けの周期は約29.5日ですが、これをひと月として年間365日を割ると、12ヵ月と10日ほど余ります。12ヵ月を1年と固定してしまうと、この10日分づつ季節がずれていってしまいますので、月を基準とする暦では、3年に1度ほど1年を13ヵ月として、調整していました。この調整のために加える月を閏月(うるうづき)と呼び、太陽の夏至や冬至などと合わせながら閏月の挿入時期を決めていたようです。
月は約27.3日で地球の周りを一周しています。そしてこれと同じ周期で自転をしているため、地球から紐をつけて振り回しているように、月が地球に向けている面は一定で、地球から月の裏側が見えないことはよく知られています。
ところで月が地球の周りを回る周期は約27.3日なのに、月の満月から満月の満ち欠けの周期はどうして29.5日とずれがあるのでしょう。それは地球が太陽の周りを回っているからです。地球は365日で太陽の周りを1周しますので、月が地球を1周する27.3日の間に、地球は太陽の周りを365分の27.3周分、角度にして約30°ほど移動することになります。月も地球と一緒に動きますので、月に当たる太陽光線の角度もそれだけ変化します。その分余計に地球の周りを回らないと、地球から見た月の陰の形が同じにはならないということです。
左上の図で月が地球を1周する27.3日間で、地球はAからBへ移動します。月は地球がAの地点での満月の位置のa1からBの地点のa2まで地球を1周しますが、B地点では太陽との関係でbの位置までいかないと満月にはなりません。したがって月がa2からbまで移動するための2日間ほど、月の満ち欠けの周期は地球を1周する日数より長くかかることになり、これを加えて約29.5日となるわけです。
先程「朝」の話をしましたが、元旦の「旦」という字の意味も朝です。地平線の上に太陽が昇って行く様子を現した単純明快な形です。えっ、地平線に日が沈んで行くようにも見えるから、夕という意味でもいいのではないか?。そういわれてみればそうですけど…、でも「旦」の字は朝なんです。